※本記事にはPR(広告)が含まれます。
「全然薬を飲んでくれなくて……」
過去に担当していた、認知症介護をしている娘さんから相談を受けたことがありました。
お母さんはアルツハイマー型認知症。処方された薬が毎回大量に残っていて、飲んだのか飲んでいないのかもわからない。
「毎朝、電話をして声をかけているのに、たまに様子を見に行くと飲んでいたり、飲んでいなかったり。このままだと病気が悪化しないか、本当に怖くて」と。
この記事では、認知症の親御さんの服薬管理に悩む家族に向けて、現役ケアマネジャーの僕が在宅で使える具体的なサポート方法を解説します。
この記事を読むとわかること
- なぜ認知症になると薬の管理ができなくなるのか
- 介護保険・医療保険で使える3つのサービス
- 家族ができる現実的な工夫
ー目次ー
認知症の人が薬を管理できなくなる、3つの理由
認知症による服薬トラブルには、ちゃんと理由があります。
①飲んだことを忘れてしまう(記憶障害)
認知症には中核症状というものがあり、その中のひとつに記憶障害があります。
「さっき飲んだ」という記憶そのものが残らないため、本人には「飲んでいない」が事実になります。
いくら「もう飲んだよ」と伝えても、本人の記憶にはないので納得できないのです。
現場でよく見るのが、「飲んだ」と訴えるお母さんと、「飲んでない」と言い張る娘さんの間で毎朝言い争いになってしまうケース。どちらも嘘をついているわけではなく、記憶障害の症状がそうさせているんです。
②「飲まなくていい」と思っている(拒薬)
認知症が進むと、自分が病気であるという認識(病識)が薄れていきます。
「私は元気だから薬なんていらない」「これは毒だ」と感じて、服薬を嫌がるケースも少なくありません。特に被害妄想が出ている方は、「家族に毒を盛られている」と感じて強く拒否することもあります。
叱ったり説得しようとしても逆効果になることが多く、対応の難しさから家族が疲弊してしまうパターンです。
③同じ薬を何度も飲んでしまう(重複服薬)
飲み忘れとは逆に、「飲んだかどうか」がわからなくて何度も飲んでしまうケースも危険です。
特に血圧の薬や血糖値を下げる薬は、重複して飲むと体に深刻なダメージを与えることがあります。「残薬が多い」と思っていたら実は重複服薬が起きていた、というのも現場では珍しくない話です。

家族だけで管理しようとすると、なぜ限界が来るのか
服薬管理は、一見シンプルに見えます。「毎食後に声をかけるだけでしょ」と。
でも実際は、朝・昼・夕・就寝前と1日4回、それを毎日休みなく続けなければなりません。
仕事がある日も、体調が悪い日も、旅行に行きたい日も関係なく。
しかも声をかけるだけで飲んでくれるならまだいい。
拒薬が始まったらいつ飲んでくれるかもわからない…。
そのストレスの積み重ねが、家族を追い詰めていくんです。
担当ケアマネとして断言します
服薬管理を家族だけで抱えることには、限界があります。
これは家族の努力が足りないのではなく、認知症という病気の性質上、そうなるようにできているんです。
だからこそ、介護サービスを上手に使うことが必要です。
在宅で使える3つの服薬サポート
では具体的に、どんなサービスが使えるのか。僕が現場でよく組み合わせる3つを紹介します。
①訪問介護(ヘルパー)
介護保険のサービスで、自宅にヘルパーが来てもらえる、一番身近な選択肢です。
ヘルパーが服薬に関してできることは「服薬介助」です。
薬の準備から、声かけ、飲み込みの確認、片付けまでをサポートします。ただし、医療行為にあたる「薬の調整」や「量の判断」はできません。
ポイントは一包化(いっぽうか)との組み合わせです。複数の薬をまとめて一袋にしてもらうことで、管理も確認もしやすくなります。
一包化は薬局でお願いできるので、かかりつけ医か薬局に相談してみてください。
費用がかかりますが、保険が適用されるため自己負担は思ったより少額です。
28日分の処方で1割負担の方なら、月約136円が目安です。
(※負担割合により異なります)
訪問介護は朝や昼など、服薬のタイミングに合わせて入れることができます。曜日・時間をケアプランで設定するので、まずはケアマネに相談してください。
②訪問薬剤師
薬剤師が自宅に来てくれるサービスです(医療保険が適用されます)。
訪問薬剤師にできることは、ヘルパーより広範囲です。残薬の確認・整理、薬の一包化、服薬指導、医師への情報提供まで対応してくれます。
「薬の種類が多すぎて管理できない」「残薬が山積みになっている」という状況には特に効果的です。
費用は介護保険または医療保険が適用されますが、利用状況によって異なります。
詳しくはかかりつけ薬局か担当ケアマネにご確認ください。
かかりつけの薬局に「在宅対応をしているか」を聞いてみてください。ケアマネに相談すれば、対応している薬局を紹介してもらえることもあります。
③デイサービス(通所介護)
自宅を離れて施設に通う形のサービスですが、服薬管理という観点でも大きなメリットがあります。
デイサービスに通っている時間帯は、施設のスタッフが服薬をしっかり管理してくれます。昼食後の薬など、家族が仕事で対応できない時間帯の服薬をデイに任せることで、家族の負担が大きく減ります。
また、定期的に外出してスタッフや他の利用者と交流することで、認知症の進行を穏やかにする効果も期待できます。服薬管理と生活の充実を同時に叶えられる選択肢です。
どのサービスを使えばいいか迷ったら
どのサービスをどう組み合わせるかは、ひとりひとりの状況によって違います。まずはケアマネに相談するのが、一番の近道です。

それでも難しいとき、家族ができる工夫3選
介護サービスを使いながらも、家族が関わる場面は残ります。現場で効果があったと感じる工夫を3つ紹介します。
①お薬カレンダー・一包化で「飲んだかどうか」を見える化する
「飲んだ・飲んでいない」の言い争いをなくすために一番効果的なのが、見える化です。
お薬カレンダー(ポケットがついた壁掛けのカレンダー)に朝・昼・夜・就寝前ごとに薬をセットしておくと、残っているかどうかで一目で確認できます。薬局に一包化をお願いすると、「〇月〇日朝」と印字されて出てくるため、さらに管理しやすくなります。
「飲んだ」「飲んでいない」の言い争いがなくなるだけで、家族の精神的な負担がかなり軽くなります。
お薬カレンダーは、100円ショップや薬局、Amazonなどのネット通販で手軽に購入できます。
「お薬カレンダー」で検索してみてください。
②拒薬には正面から戦わない
「飲まなきゃダメ!」と正面からぶつかると、拒薬はほぼ悪化します。
現場で使われる工夫のひとつが、タイミングと声かけを変えること。食事中に「これも一緒にどうぞ」とさりげなく出す、本人が好きな飲み物と一緒に出す、など。拒薬がひどい場合は、医師に相談して薬の形状を錠剤から貼り薬や液体に変えてもらう選択肢もあります。
「飲んでもらえなかった」と自分を責めたり、絶対飲ませる!と意固地にならないでください。工夫しても難しいときは、それだけ症状が進んでいるということ。プロのサポートを入れるタイミングのサインでもあります。
③「誰がいつ管理するか」をケアプランに明記する
服薬管理でよくある失敗が、「なんとなく家族がやっている」状態です。
誰かが体調を崩したとき、旅行に行きたいとき、急に対応できなくなります。ケアプランに「月・水・金の朝はヘルパー、昼は娘、デイの日は施設」のように明記することで、抜けが生まれにくくなります。
「誰が管理するか決まっていない」という状況は、ケアマネに相談するだけで大きく改善します。

まとめ|「完璧に管理しなければ」という重荷を、一人で抱えない
認知症の親御さんの服薬管理は、家族だけでは限界があります。それはあなたの努力が足りないのではなく、認知症という病気がそれだけ難しいということです。
訪問介護・訪問薬剤師・デイサービス、そして家族でできる工夫を組み合わせることで、今よりずっと楽になれる方法は必ずあります。
まず一歩、踏み出してみてください
「どこから手をつければいいかわからない」という方は、まずケアマネに話してみてください。
相談してみると、状況が大きく変わることがあります。あなたが限界を迎える前に、一緒に考えましょう。^^

